
バイクで何より大事なのって、「速く走れる」ことじゃなくて「ちゃんと止まれる」ことだと思います。
どんなに速いバイクでもちゃんと止まれなければ事故待ったなしですからね。
たま~に、ブレーキパッドの残量ゼロ、ディスクをガリガリに削って走ってきたお客様や、ブレーキレバーを握り込んでも全然ブレーキが掛からない状態でお店にお越し頂くお客様がいらっしゃいます。
長く乗っているうちに慣れてしまって違和感に気づけなくなってしまうこともあるのですがヒジョーにキケンです。
ブレーキパッド(ドラム車ならブレーキシュー)の残量チェックや、ブレーキの握り心地がおかしくないか?というのは乗車前にしっかりチェックしたいポイントですね。
そんなワケで、現在お客様からの依頼でオーバーホール中のブレーキキャリパーの様子です。
車種はXJR1300、ブレーキパッドが片減りしている、ということでご依頼いただきました。

オーバーホールといっても「ピストンシール」という部品を交換して、ピストンやキャリパーを綺麗に掃除してもとに戻す。あとはブレーキフルードを入れてしっかりエア抜きすれば完成です。
ピストンシールが劣化した結果ブレーキピストンの動きが悪くなると片減りや引きずりの原因になります。(その他の原因もありますが…)

こちらがブレーキキャリパーのピストン。
これが油圧で押し出されることでブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける働きをします。

キャリパーの内側を覗くと4つのピストンが2つずつ向かい合って頭を出していますよね。XJR1300の場合は向かい合ったピストンの双方がせり出すタイプのキャリパーで、「対向4PODキャリパー」なんて言われるものです。
パッドの減りに応じてピストンの頭はどんどんせり出してきます。出てきた部分はブレーキダストでかなり汚れてしまうのでパッド交換時についでに綺麗にしてやるのがセオリーですね。
汚れもブレーキ不調の原因になります。
今回はオーバーホールするので全部取り外したうえでできるだけ綺麗に掃除してあげます。

清掃後のブレーキピストンと新品のピストンシール。
先程の写真と比べて付着していた黒い汚れがなくなってきれいになりました。
ピストンシールはブレーキフルードが漏れないようにするパッキンの役割を果たすと同時に、ブレーキをリリースした時にシールそのものの弾力でほんの僅かにピストンを引っ込める役目も果たしています。
ピストンシールが劣化、硬化してしまうとこの「ピストンを引っ込める」働きができなくなり、ブレーキがかかりっぱなしになる引きずりや、パッドの片減りを招くことに繋がるワケですね。
ただの黒い輪ゴムの様に見えて、実はかなり大事な役割を果たしている部品なので侮ってはいけませんよ。
ちなみに、ピストンが片側だけにある「片押しキャリパー」だと左右のパッドをバランスよく押し付けるための「スライドピン」という部品の動きが悪いと片減りの原因になることがあります。

ピストン、キャリパーブロック、ピストンピンなんかの汚れるパーツをできるだけ綺麗に掃除したら、新品のピストンシールを使ってピストンを組み立て。
XJR1300のフロントブレーキはダブルディスクなので今回はこれを2セット。そうして最後にブレーキフルードを投入、エア抜きしたらオーバーホール終了です。
ブレーキは大事(2回目)

今回はブレーキキャリパーのオーバーホールでしたが、マスターシリンダーやブレーキパッド、ディスクローターなど他の部品のメンテナンスも重要です。
どれか一つでも欠けていれば、ブレーキは十全なパフォーマンスを発揮してくれなくなる可能性があります。
先述の通り、ブレーキパッドやディスクの残量、ブレーキの握り心地…ちゃんとブレーキが効いているかどうかは常日頃からしっかりチェックしていただいたうえでお乗りいただければと思います。
ドラムブレーキ車で、ブレーキレバーがゆるゆるで握り込んでも全然ブレーキが効かないという状態で乗っている方…結構多く見かけますけどそれってすごく危ないですよ…?
ディスクブレーキ車でも同様です。レバーを握るとグリップに当たるまで握り込んでしまえるような状態の方がいますが、それって普通の状態ではありません。
一度グッと強く握り込んだ後も少しずつグイグイっと握り込めてしまうような節度感のない握り心地の状態も要整備です。
最初に違和感があってもどんどん慣れて気にならなくなってしまうものなので、「なにか調子がおかしいぞ?」と思ったら早めにご相談いただきたいと思います。